2011年2月28日月曜日

サラマンカ新大聖堂のパイプオルガンと日本人


私のブログの読者の方はもうご存知の通り、先週末はサラマンカへ行ってきました。サラマンカでは、街のシンボルともいえる旧大聖堂と新大聖堂も訪れました。新大聖堂は16世紀から18世紀にかけて建てられたゴシック様式の建築です。


大聖堂の中には、下の写真のような素晴しいパイプオルガンがあります。ヨーロッパでも最も古いパイプオルガンのひとつに数えられているそうです。今日は、このパイプオルガンにまつわる、素敵な物語を紹介したいと思います。


写真:サラマンカ新大聖堂のパイプオルガン

今から30年以上も昔のこと、ある一人の日本人が、ヨーロッパのパイプオルガンを研究するため、スペインを旅していました。あるとき、この旅人はサラマンカを訪れ、新大聖堂に飾られていたとても古いパイプオルガンに目を見張りました。素晴しいオルガンですが、残念なことに、その保存状態は大変悪く、殆ど使い物にはならない状態でした。


これほど立派なものが、このような状態で保存されていることに心を痛めたその旅人は、自分がその修復をしたいと強く考えるようになり、その旨を新大聖堂に伝えました。しかし、この大きくて古いパイプオルガンを修復するには膨大な費用がかかるため、その思いは叶いませんでした。


それから数年後の1985年、日本の皇太子ご夫妻(今の天皇陛下と美智子さま)がサラマンカを訪れ、その時に新大聖堂にもお立ち寄りになりました。そして、やはり古くて立派なパイプオルガンが無惨な姿で保存されていることに心を痛められ、このパイプオルガンを修復しようというかの旅人の思いに賛同されました。日本に帰られた後、皇太子ご夫妻はパイプオルガン修復の為のチャリティーコンサートを東京で開催され、さらにスペインへ進出している日本企業からの協賛を得て資金を調達し、ついに、旅人の思いは現実のものとなるのでした。

パイプオルガンの修復工事には、1年という歳月を要し、1990年3月、蘇ったパイプオルガンは大聖堂にその音色を響かせました。悠久の時を超えて、そして日本というスペインからはとても遠く離れた国の人々の温かい心によって、サラマンカのパイプオルガンは生命を取り戻したのです。


このお披露目コンサートは、日本のNHKとスペインのTVE(国営放送)で生中継されました。スペイン中の新聞は、文化財修復に対する、日本の皇室と人々の協力と優しさを讃える記事を次々に伝えました。


そして1994年、既に天皇に即位された、かの皇太子は、再びサラマンカを訪れ、修復されたパイプオルガンの音色を聴くため為に新大聖堂に立ち寄られました。


写真:岐阜県のサラマンカホール

サラマンカ新大聖堂のパイプオルガンの修復した、かの旅人の出身地である岐阜県では、当たらし県民コンサートホールの建設にあたり、彼の偉業を讃えるため、その入り口にはサラマンカ新大聖堂と同じ石彫のレリーフをとりつけることを決め、さらにパイプオルガンの複製を彼に依頼しました。このホールはサラマンカホールと命名され、1998年にオープンしました。


今日では、残念ながらこの素晴しい物語を知っている人はそう、多くはありません。実際私も、日本人の私の妻が話してくれるまで知りませんでした。とても素敵な逸話だと思いませんか?これからサラマンカの新大聖堂を訪れる人が、このパイプオルガンの物語をもう一度思い出してくれることを願ってやみません。


日本人は、歴史や祖先をとても大事にする国民です。我々が日本人から学ぶべきことは、まだまだたくさんあります。。。



1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

わたくしも読売新聞にて、この感動的なお話を知りました。
修復作業に当たられたパイプオルガン技術者の10年越しの願い、皇后さまの音楽、芸術への愛情、それら無償の行為の崇高さに深く胸を打たれ、涙を流しました。
またスペイン人のカニサレス氏がこのトピックスを広めようとして下さっていることにも有難いと思いました。
ああ、サラマンカのその素晴らしいパイプオルガンの音色を聴いてみたいものです!